トロンボーンの歴史
History of the Trombone
原典:レムコ・デ・ヤーヘル / 日本語訳:品川隆
Originally texted by Remko de Jager/
Translated by Takashi Shinagawa
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中世〜西ヨーロッパ文明
The Middle Ages - Western European Culture
ローマ王朝の崩落後、ブッチーナBuccinaやテューバなどいくつかの楽器はそのまま残り使われ続けました。ラヴェンナRavenna(ボローニャBolognaの東にある町)の聖ミシェル・アフリスコ the Saint Michele Affrisco(B.C.545)のモザイクには、ローマのブッチーナに似たより大きな楽器を演奏する、3人の天使が描かれています。
これは、ローマ時代Roman(エトルリア、ラ:Etruria、英:Etruscan)の楽器が発見され、その時代の楽器職人によって復元されたということでしょう。
中世の時代(A.C.900-1450)の西洋の各文明での金管楽器の発達は大きなものでした。十字軍遠征(A.C.1000-1200)とともにオリエントOrient(ペルシアPersia、アラビアArabia、ビザンティンByzantine)から西ヨーロッパに出戻った楽器も、教会や大聖堂などにたくさんあるラッパ型の楽器を演奏する天使たちの描画などに登場しています。軍事的な色から宗教的な目的へと用途が変わってきました。
書物では、中世のトランペットの形状が大きく2つに分類されています。
- ブチナbucina、ブズィネbuzine、ブイスィネbuisine、ボチネbocine、あるいはこれらに似た名称(すべてラテン・ローマの"buccina"に由来)のもの。
- クラロclaro、クラリオンclarion、クラルーンklaroenなど、小さな信号ラッパ。
1300年以降は、より持ち運びやすいように管を曲げるようになりました。
トランペット折り曲げの段階的歴史
A: 第1段階。単一平面上での間隔の広いジグザグ。(13〜14世紀頃)
B: 第2段階。より狭まったジグザグ。
C: 第3段階。二平面上での狭まったジグザグ。(15〜16世紀)
D: Cの変形で、マウスピースの部分とベルの部分が交差。16世紀のドイツの絵図に描かれています。また、17〜18世紀のより平和な情勢下においても、イギリスの職人たちによって所有されていたようです。
中世の多くのことが謎に包まれています。1500年以降においては、当時の百科事典や、セバスティアン・フィアドゥンクSebastian Virdung著「音楽概観」“Musica Getutscht”(1511)やアグリコラAgricola著“Musica Instrumentails Deudsch” (1528)のような出典の中で、いろいろな楽器が紹介されており、先述のクラロclaro、クラロンclaron、クラリオンclarionなどと呼ばれた楽器は長くてカーブのある楽器であること、トルンペットtrumpetあるいはトルンメットtrummetなどと呼ばれる楽器が存在したということなどがわかっています。我々にとって最も特筆されるべきことは、これらの楽器に一元的な呼び方がなかったということです。
残された芸術作品の数々が、15世紀の楽器がどんなルックスをしていたかを示しています。フランダース(ベルギー)の画家ハンス・メムリンクHans Memlingが1485年にナヘラNajera(スペイン)の教会に作った祭壇画では、 トランペットを持った2人の天使たちが描かれています。(右側の天使のものはスライド・トランペットで、その楽器全体がスライドになっています。)
モダン・トロンボーンの前身に当たる楽器には、スライドが付いていたのではなく、楽器そのものがスライドで、おそらく音高は2音くらい下げることができたと思われます。
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