トロンボーンの歴史
History of the Trombone
原典:レムコ・デ・ヤーヘル / 日本語訳:品川隆
Originally texted by Remko de Jager/
Translated by Takashi Shinagawa
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先史時代
Prehistory
あらゆる管楽器全般の発達の歴史の中で、今日の私たちが知っているトロンボーンは中世末期に発達しました。まずはそこに至るまでの歴史からはじめましょう。
古代における管楽器の用途や形状について知るにあたって、考古学の資料や描画を参考にすることができます。そう遠くない昔に認知された、たとえばニューギニアのパプア人のようないわゆる原始人を思い浮かべると、原始時代、少なくともその時代の天然の物資をどんなふうに使っていたかを見取ることができます。
管楽器としての最古の用例は、メガホンのように人間の声を増強する役割か、Rain Danceと呼ばれる神々に声を届ける行為(雨乞い)、祖先との交信、敵の恐喝など、魔法めいた民族儀式のようなものでした。船を入港させ導くという役割も、これらの楽器の使用のルーツだったかもしれません。動物の角、手ごろな太さの小枝や骨、貝殻などの自然の材料が用いられました。
その後は、時期の詳細はわかりませんが、唇の振動音を増強するための道具が使われていました。
そして、唇の振動と声の両方を増強する機能をもった楽器〜オーストラリアのディドゲリドゥーDidgeridooを確認することができます。唇の振動で音を出すほか、唸ったり叫んだり歌ったりして動物の鳴き声などを真似します。
didgeridoo |
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アフリカでは、ゾウ、クーズー、カモシカなどの角が現在も使用されている例が存在します。
クーズーの角 A horn of a kudu
ヨーロッパにはスイスのアルプホルンalphornや、スウェーデン、ノルウェー、バルト三国、ルーマニア、オーストリアなどに似たような楽器が存在し、そしてオランダのトゥヴェンテTwenteにはMidwinter Hornと呼ばれるものがあります。
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