EUROPEAN TROMBONE FESTIVAL "SLIDE FACTORY" 2009

DAY 2 / 4 (Friday 27 March)

【3月27日(金)〜フェスティヴァル第2日】

09:00-10:00

Warming-Up

Michel Becquet

10:00-12:00

Public Masterclasses

Joseph Alessi, Michel Becquet, Jorgen van Rijen, Peter Moore, Students from five conservatories

12:00-13:00

Spotlight on Hungary Lunch Concert

Corpus Trombone Quartet, Csaba Wagner

14:00-15:00

Clinic Hungarian School

Corpus Trombone Quartet, Csaba Wagner

15:00-16:30

Musicians of Tomorrow

Trombone Classes from New York, Lyon, Lausanne, Berlin and Rotterdam, J.Alessi, Michel Becquet, Ben van Dijk

16:30-17:30

Clinic Nils Wogram

Nils Wogram

17:30-18:30

Clinic Erik van Lier

Erik van Lier

19:30-20:00

Introduction by Christian Lindberg

Christian Lindberg, Pierre Volders, Patrick van Deurzen

20:15-22:30

Northern Lights

Rotterdam Philharmonic Orchestra, Christian Lindberg(cond), New Trombone Collective

22:30-24:00

Watters vs Wogram

HarryWatters, NilsWogram, Marius Beets(b), Rob van Bavel(p), Marcel Serierse(d)

 フェスティヴァル2日目はM.ベッケ氏によるウォームアップ・セッションから始まりました。朝9時からにも関わらず参加者は100人以上にのぼりましたが、ベッケ氏のリードのもと、この大人数のトロンボーン集団が美しいサウンドで会場を満たしているのが印象的でした。リヨン音楽院で行う彼のスタイルそのままの内容を、本人の見本を目の前に視覚と聴覚の両方で参考にできる貴重な時間となりました。
10:00-12:00は前日と同様のジョー・アレッシ、ミシェル・ベッケ両氏による、各音楽院のアンサンブルを中心としたマスタークラスがDe Doelen内で行われ、フェスティヴァル参加者に公開されました。


Jorgen introducing Joe and Peter to the audience


Joe giving advices after Peter's Aria et Polonaise (J.Jongen)


Julliard class with Michel Becquet


Lyon class with Joe Alessi


Rotterdam class playing for Joe and Michel


Playing for audience, most of whom are trombonists

 司会進行役のユルゲンに紹介されて、ジョーとピーターが登場。13歳ピーターのすばらしいAria et Polonaise(J.Jongen)の演奏に感嘆しつつも、ジョーはたくさんのアドヴァイスをしました。「うちのNew York Phil.の副首席のオーディションがあるけど、来ないか?」と声をかけると、会場からは歓声があがりました。

 12:00からは、このフェスティヴァルのメイン・イベントのひとつである、“スポットライト・オン・ハンガリー”と題したコルプス・トロンボーン・カルテット with チャバ・ワグナーによるランチコンサートと、14:00からはその彼らのリスト音楽院のトロンボーンクラス在籍時代の“ハンガリアン・スクール”と題したクリニックが、それぞれ行われました。

 コンサートではコルプス・カルテットの卓越したテクニックと“熱い”サウンドが存分に堪能でき、またチャバの超絶技巧には聴衆一堂息をのみました。

 とても若いメンバーばかりのこのグループが、リスト音楽院で積み上げられてきたリッチな伝統を、ヨーロッパから広く集まった聴衆に披露した瞬間でした。

公式DVDに収録!


コルプス・トロンボーン・カルテット with チャバ・ワグナー


チャバ・ワグナー Csaba Wagner playing Solo No.12 (Laszlo Dubrovay)

 15:00からはDe DoelenのGrote Zaal(大ホール)において、 "Musicians of Tomorrow"と題した5つの音楽院のトロンボーン・クラスによるジョイント・コンサートが行われました。
ロッテルダム(指揮:B.v.ダイク、指導:P.フォルダース、J.v.ライエン、R.d.ヤヘル)、リヨン+ローザンヌ(指揮:M.ベッケ)、ベルリン(指導:S.シュルツ)、ニュー・ヨーク(指揮:J.アレッシ)、五校合同演奏(指揮:B.v.ダイク)の順の出演で、どこも非常に高いレベルのアンサンブル演奏を誇りながらも、それぞれのメソードや考え方など取り組みの特徴の違いがはっきりとわかる、大変に興味深い時間となりました。次世代を担う若いミュージシャンたちによる、音楽や演奏スタイルが多様に変化するパフォーマンスは、おそらく聴衆の予想をはるかに超えた非常に完成度の高いすばらしいものだったようで、1曲終わるごとに会場がざわついていたのが印象的でした。

Rotterdam class with Ben van Dijk
Conductors: Michel Becquet, Ben van Dijk, Joe Alessi

?

Lyon & Lausaane classes with Michel Becquet

Julliard class with Joe Alessi


Five Classes together with Ben van Dijk!!

それぞれの音楽院のパフォーマンスと合同演奏は公式DVDに収録!


Nils Wogram at his clinic

 16:30からはドイツのジャズ・トロンボニスト、ニルス・ヴォグラムによる"New-Style"即興についてのクリニック。

 彼独特の特殊奏法、各種ミュートの特徴を活かした様々な使い方のアイディアなど、技の宝庫を次々と公開しては聴講者の度肝をぬいておりました。

 圧巻だったのは、四分音上の音階でアドリヴを演奏し続け、どんどん転調していく様! Dの四分音高い調(DとEbの中間音を基音とする音階、つまりD調のスケールがすべて1/4音だけ高く聴こえる)からスタートして、転調先のどの四分音階上のスケールでも淀みなくきれいにかっこよく流れるようなフレーズを作り出していくと、聴講者はみな目を丸くして見入っていました。

 17:30からはエリック・ファン・リール(日本で知られているBart van Lierバート・ファン・リールの兄で、バストロンボーン奏者)によるクリニックで、彼が5年以上にもわたって研究してきたThe Alexander Techniqueアレキサンダー・テクニックのトロンボーン演奏における効能が紹介されました。

 さらにブレスのテクニックや良い呼吸の重要性を説き、聞き入る若い参加者たちはしきりにメモをとっていました。


Erik van Lier at his clinic

 20:15からのメイン・イベント〜ロッテルダム・フィル+NTCの世界初演を目前にした19:30、作曲者であり指揮者であるクリスティアン・リンドバーグがNTCメンバーでロッテルダム・フィル首席トロンボーン奏者のピエール・フォルダースとともに登場し、アナウンサーとのインタビュー形式で熱弁をふるいました。内容は彼の作品"The Wave of Wollongong"の作曲に至る経緯にはじまり、作品中の各部分の描写や意図についていくつか紹介し、さらには彼自身の作曲活動や指揮活動についても話題が及びました。このコンサートは通常のロッテルダム・フィルのコンサートということで、会見に同席した人々はSF参加者よりも一般の音楽ファンが多く、この奇妙なトロンボーン吹きの不思議な世界へとひきこまれていました。

Christian Lindberg at interview

 開演前のDe Doelen Grote Zaal(大ホール)のホワイエに構えた、フェスティヴァル・デスク。フェスティヴァル実行委員が、スライド・ファクトリー出演アーティストたちのおびただしい数のアイテムをそろえて、お客さんを出迎えました。

Festival Desk with full of trombone items!!

 さらに、NTCメンバーのクーンによる、ストリートオルガンとのちょっとイカレたショーもはじまり、ホワイエでお茶を楽しむ人々は「なんだ、なんだ!?」と唖然、その摩訶不思議なプレイに聴き入り、そして笑いがこぼれていました。


Koen Kaptijn performing with a streetorgan


A big Japanese mafia of the participants in the SF2009!!

 2005年、C.リンドバーグがメイン・ゲストとして参加した第1回のスライド・ファクトリー。その一番のハイライトとなったガラ・コンサートの終演後に、ニュー・トロンボーン・コレクティヴ(NTC)とシンフォニー・オーケストラのための作品をつくるというアイディアが誕生しました。4年のときを経て、この日、そのアイディアはついに現実のものとなりました。史上最も多くの賞賛と名声を得てきたトロンボーン奏者による作曲の世界初演に、NTCとロッテルダム・フィルが挑戦しました。これはC.リンドバーグ本人にとっても、オランダでの指揮者デビューという記念のコンサートとなりました。


New Trombone Collective with Rotterdam Philharmonic Orchestra

 私が個人的に感じた限りでは、そのサウンドはソロ・トロンボーンを伴う一般のトロンボーン協奏曲とは全く異なり、ハーモニーでその真骨頂を発揮するトロンボーンという楽器の特長が存分に活かされたものでした。数本のトロンボーンとオーケストラのための作品は過去にもいくつかありましたが、9本ともなると、トロンボーン群はオーケストラと対等かそれ以上のダイナミクスでまで存在することができます。また、オーケストラも一般の独奏楽器(群)を伴う協奏曲の伴奏においてはしばしば小さな音量の独創声部をたたせるためにダイナミクスの幅を大幅に抑えることが要求されますが、この場合はオーケストラもそのダイナミクス・レンジをほぼフルに使って大きな演奏をすることができます。

 オーケストラの後部に3つのトリオに分かれて配置されたNTCは、その研ぎ澄まされたアンサンブル演奏で、決して力押しをすることなしに、オーケストラとベストのバランスで存在し、グループ同士で協奏し、オーケストラと協奏し、J.v.ライエンの美しいソロが鳴り響いて、数々のドラマティックな場面をつくりあげていました。次の日も同じプログラムの公演があるにもかかわらず、このメジャーとはいえないスカンジナヴィア・プログラム(他はニールセン、シベリウス)の公演はほぼ満席に。今まで見たことのなかったトロンボーンとオーケストラのサウンドを楽しんだ聴衆はスタンディングオベーションで作曲者兼指揮者と10人のトロンボーン吹きたちを称えました。(公式DVDに収録! このページ一番下のプロモーション・クリップをどうぞ!)

 オランダでナンバー・ワンのリズム・セクションが、トロンボーンとの協演を最高潮へと導く手はずを整え、国際的に活躍する二人のジャズ・トロンボニストたちを待ち構えていました。ジャズの発祥地・ニュー・オーリンズからハリー・ワッタースと、ドイツからニルス・ヴォグラムは、その挑戦を受け、ともにステージに上がりました。全く異なる背景を持このつ二人のヒーローたちのコンサートは、アメリカとヨーロッパのジャズのそれぞれの伝統のスタイルのぶつかりあいでした。

 NTC+ロッテルダム・フィル+C.リンドバーグのコンサート後にホールからホワイエに出てきた聴衆は、グラスを片手にこの協演に釘付けになっていました。公式DVDに収録!


Harry & Nils on stage!!

 終了後はDoelen Cafeに移動して、宴はさらに朝方まで・・・。


Ben, Takahiro, Martin, Takashi, Tomer


Koen & Nils

【3月28日(土) 〜フェスティヴァル第3日】はこちら